親友との思い出

中学の3年間、毎年写生大会があった。私は親友と共に東屋に行き写生大会の数時間を過ごしていた時間が人生で1番幸せだったように思う。 

 描きたい風景があるからではなく椅子と日除けの屋根があるという理由で丁度よかった為その場所を選んだ。トイレも近くにあった。何を描いたかは忘れた。たしか道路を描いていた。田舎であったので車の音もないし学校からやや離れているので先生の目もさほど届かない。6月ということで気温も心地よく会話も弾んだ。目的は絵を描くことではなく友情を深めることであったので先生が見回りにくる時だけ黙り丁寧なタッチで絵を進め、話しかけられれば穏やかに微笑んで応答した。ちなみに美術の先生は50代だっただろうか、猥褻行為でいつか捕まるのではという危うさを孕んだセクハラおやじであった。当時は美術の先生は皆こんなものなんだろうかと思っていたが高校の選択授業の先生は美しく優しく儚い雰囲気であったのでその偏見は早々に取り除かれた。とても良い上書き保存ができた。私達は先生の前では良い子を演じていた。先生が去るとまた会話に花を咲かせた。何を話していたかは忘れたが楽しい会話をしていた。色を混ぜて実際の風景の色に近づける努力もせず直に絵具を画用紙に絞り出し塗っていた。会話を優先させなければならないので仕方がない。しかし友人は要領が良いのでなかなかの絵を完成させていた。後で学校の廊下に飾られ全校生徒及び教師に見られることを忘れ遠近感がめちゃくちゃで色も工夫ゼロのお粗末な絵を描いていたのは私だけだった。

卒業後も彼女とは仲が良く、成人して自由に動けるようになった今は上野公園でアイスを食べたり博物館に行ったり同級生の実家の蕎麦屋でカツ丼を頂いて絆を深めている。